Monday 30 July 2012

デザイン家具、本物とコピー商品の違いは?

皆様、モイ!
よしこです。

新しい1週間が始まりましたね。
週末は気象庁から「Trooppista.(=熱帯的な気候。)」とつぶやきが出る程の湿気と気温だったフィンランド。今日はまた過ごし易い肌寒さに戻りました。油断せずに水分を取って、今週も元気に過ごしたいところです。


随分前のことになってしまうのですが、6月の末にヘルシンギンサノマット紙(Helsingin Sanomat)に掲載されたある記事についてご紹介します。デザイン家具と呼ばれる高価な家具を真似て製造されるコピー商品が本物とどう違うのかを調査したこの記事、大見出しは「Tuoleissa on eroja(椅子には違いがある。)」


面白い記事はスクラップしておくのですが、同時にツイッターでつぶやくこともあります。ちょうど↑の記事もツイッターでつぶやいたところ「どんな内容ですか?」とのお言葉をいただきました。で、今回のブログ記事に至ったというわけです。ツイッターでこうして反応をいただけるのはとても嬉しいので、はりきります。笑。



↑こちらが、記事。


今回登場したコピー商品は、もちろん合法的に販売されているものです。
スウェーデン出身のレナート・ニューベルグ(Lennart Nyberg)氏が運営するDesigners Revoltというwebショップがその販売元。イギリスの企業です。

各国にて制定されている設計者・デザイナーのコピーライト保護期間。
フィンランドではデザイナーの死後70年間はコピーライトが保護されるので、この期間はコピー商品製造が違法になります。このコピーライト保護期間が短く制定されているイギリスに本拠を置くことで、この会社でのコピー商品は合法というわけです。フィンランドを代表するデザイナー、エーロ・アールニオ(Eero Aarnio)氏のボールチェアもご本人がご健在ながら↑のウェブショップでコピー版を入手することができます。


Designers Revoltの発するメッセージ、「破格なお値段で、オリジナル品質の定番デザインを」が本当なのかどうかをこの新聞記事が分かり易く解説してくれています。解説担当は、木工職人マルコ・ヴァルヨス(Marko Varjos)氏。エデュケーションセンターSalpausや、デザイン教育の名門ラハティデザインインスティテュートで教鞭を取る指導者でもあります。


Designers Revoltで販売されている商品の中から、今回の調査に選ばれたのはデンマークのデザイン家具。ハンス・ウェグナーが1949年にデザインしたCH24と、アルネ・ヤコブセンが1955年にデザインしたセブン・チェアです。

見た目、解体分析、重量実験などを経て分かったポイントは以下の通り。


【CH24】
デンマーク価格例:700€
フィンランド価格例:1120€
Designers Revolt価格例:373,10€(配送料含む)

・仕上げが違う。
(現行品はソープフィニッシュ、ナラ材。コピー品はナチュラル、ナラ材。)

・座面の高さが全く違う。
(現行品は44-45cm、コピー品は42cm。現行品は時代に合わせ15年前に座面を2cm高くしたそうで、コピー品はオリジナルのままを再現していることになる。)


・背面の品質が違う。
(現行品はナラ材1枚から背面作り出しているが、コピー品はナラ材3部を組み合わせた作り。)
⇒製造行程を考えると、現行品では1枚から背面を作るのに成功せず無駄になる木材が大量に出ることが想像できる。


・脚の木材選定基準が違う。
(現行品は、木目や色合いを考慮して脚のナラ材を吟味して選定している可能性が高い。)


・背面等考慮すると品質としてはコピー品が劣るが、「日常に使う家具」としてはコピー品も良質と言える。(現行品は品質が余分に高いとも言える。)




【セブン・チェア】
デンマーク価格例:360€
フィンランド価格例:374€
Designers Revolt価格例:214,70€(配送料含む)

・仕上げ素材が違う。
(現行品はアッシュ材仕上げ。コピー品はナラ材仕上げ。)

・内部素材が違う。
(現行品はブナ材の一種。コピー品はおそらくアジア産の柔らかい木材。)

・見た目が違う。
(現行品は木目が映えるマットな質感。コピー品は木目がまばらに見え、表面にビニールのようなつやが出ている。)

・重量が違う。
(現行品と比べ、コピー品は非常に重い。脚に利用している金属の違いも影響している可能性が高い。)

・耐久性が違う。
(脚を取り外し、座面と背面のカーブが山になるように地面に設置した場合、現行品は95kgに耐えられたが、コピー品は耐えられず割れた。)

・脚の取り付け部分に品質の違いがある。
(現行品の方がコピー品より良品質)

・コピー品の品質は現行品に近いとも言い難い程低い。





それぞれの調査項目について詳細な写真も紹介されていて、非常に面白かったです。





「デザイン」というものについて、改めて考えさせられる今回の記事。
飾って眺めて楽しむものならば、コピー品もほとんど遜色はないのかもしれません。しかし、「家具は使う人の生活に馴染んで初めてその役目を果たすもの」と考えるのならば、コピー品は家具デザイン自体を冒涜しているとも言えます。

何でもそうかもしれませんが、使う人に対して真剣に向き合った末に生まれたものが、結局は人の心を動かすような気がします。この真剣な作り手の気持ちに対して、数百ユーロを払うか?払わないか?デザインが発達すると、使う側も発達するように求められるのかもしれませんね。



〈参照記事:Helsingin Sanomat B5 "Kopiohuonekalut", Perjantaina 22. Kesäkuuta 2012〉

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